あるところに、たいそう裕福なねずみの一家がおりました。一家は娘を授かると、「天下に並ぶものの無い婿をとらせよう」と考えました。
「太陽は常に世界を照らしている。太陽こそ婿にふさわしい。」
そう考えたねずみは太陽に言いました。
「太陽さん、あなたは天下一です。是非とも娘の婿に来てください。」
しかし太陽は言いました。
「確かに私は世界を照らすことができる。だがひとたび雲がたちこめれば、その光は遮られてしまう。雲を婿にするといい。」
「確かにそうだ」
そう思ったねずみは、雲が出るのを待つと、早速雲にその話をしました。
そうすると雲は言いました。
「私は日の光を隠すことは出来るけど、ひとたび風に吹かれてしまえば、すぐに飛ばされてしまうよ。風を婿にするといい。」
「そうかもしれない。」
ねずみは、吹く風に向かってまた話をしました。
今度は風が言いました。
「私は雲を吹き飛ばすことはできても、家を倒すことはできません。家を婿にしなさい。」
「そうしようか」
ねずみは家に向かってまた話をしました。
家は言いました。
「私は風に倒されることはないけど、ねずみにかじられるとたちまち穴が開いてしまうよ。」
ねずみは考えました。
「そうか、そうするとねずみが天下一だ」
ねずみの一家の娘は、ねずみを婿にとって幸せに暮らしたそうです。