放送と通信と日常と
by tkt33
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリ:音のない声( 5 )
だれかの言葉
 新宿で空ばかり見て歩いてた。一面の灰色に小さな雪が光った。

 誰かが言ってた。「真っ当な人生を送るってのは意外と大変なんじゃないか。」って。半分当たってると思うんだ。道を踏み外すのは簡単だから。積み上げてきたものが壊れるのは一瞬だから。

 でも、そのまま歩いていくのも簡単なはずなんだ。変わらないものなんてなくて、時間は流れていって。楽しい日々は思い出の中。比べるから現実は辛くて、逃げ出したくなってしまう。それでも、簡単なはずなんだ。独りじゃないから。

 便りの無いのはいい知らせ、なんて嘘で。孤独はまた人を蝕んでいく。自分の幸せさを馬鹿みたいに思い知らされるけど、他人の不幸を聞かされて気がつくんだとしたら酷いもんだ。
[PR]
by tkt33 | 2005-12-12 11:58 | 音のない声
生きること
 I am a part of all that I have seen.

 19世紀のイギリスの詩人、Alfred Tennysonの言葉だ。


 尊敬している人がいた。とても面白くて、とても優しくて、頼れて、かっこよくて、大切なことを教えてくれる人が。

 昔飲みに連れて行って貰ったことがあった。その時どうしてそんなことをしたのかはもう忘れてしまったけど、確か俺は随分と面白くなさそうな顔をしてた。気に障ることでもあったんだろう。きっとくだらない理由だ。

 他にも何人か一緒にいたんだけど、そこで盛り上がっていても、話に混ざることもしなかった。その人が心配してわざわざ俺に気を使って話を振ってくれても、俺はあまり愛想のない受け答えをしてた。

 終わる頃になって、少しやりすぎたと反省した。あまりいい気はしてないんだろうなあなんて思った。ただ、その人は自分で会計を済ませて言った。はにかんで、少し偉そうに。

 「今度はお前が後輩を連れてってやれよ。」

 その一言で、俺は自分が馬鹿だったことに気づいた。気を使うのは疲れただろう。腹もたっただろう。言っても良かったはずだ。「つまらなさそうにしてるなよ。」なんて。別に俺に奢る義理だってない。でも行動で、人間の大きさを見せられた。ああ、もう二度とこんなことはしないでおこう。そう思った。

 今朝出社すると、隣の席の先輩が声をかけてきた。見せられたのは訃報だった。


 動物も、植物も。例外なく、全ての生物は遺伝子を残す為に存在している。人間だって同じだ。違うのは、動物は本能で「知っている」こと。人間はそれに併せて、頭で「理解している」こと。

 だから人は、誰かがいなくなった時、もう会えなくなった時に、遺伝子の変わりになる色々なものを残すことが出来る。記憶、行動、心。どれも形に表すことは出来ないけれど、人にとってとても特別なものだ。

 人は日々色々な人から影響を受けて生きていく。そうしてその誰かの一部分がまた他の誰かを形作る。多くの人の中で、多くの人が生き続けていく。みんなどこかの部分で、誰かに似ている。

 忘れずに残していくこと。残っていることを忘れないこと。

 今はただ、ご冥福をお祈りします。
[PR]
by tkt33 | 2005-09-05 21:56 | 音のない声
theatre of life
b0009514_1164435.jpg

 人生は選択の連続だ。時には、何かを手にするために、何かを捨てなければいけない。誰かに救いや助言を求めることはできても、結局答えを決めるのは自分自身で、だからこそ、しっかりと地に足をつけて歩いていかなくてはいけない。目指すところへ、独りで生きていかなくてはいけない。

 心があるから人は寄り添うんだけど、心があるばかりに人は孤独だ。ただみんな独りで生きていけるほど強くはないから、居場所を探す。その中で、たまたま進む道が同じ者同士が一緒に生きていく。

 いくつも、いくつも過去を積み重ねてきて、やっと今があって。生きているのは間違いなく今だけど、その今もやがておとずれる未来の為の通過点で。生きた証を刻む為に、未来へ伝える為に、また歩き続ける。

 人生は長い一本の映画だ。

 人はそれぞれ自分の人生を生きていて、それぞれが自分の映画で主役を演じている。だから準主役級の出演者にも、脇役にも、エキストラにさえも、やっぱりそれぞれに一つずつの物語がある。

 映画はどれもとても贅沢で、多くの豪華な出演者がいて、楽しかったり、悲しかったりするストーリーがいくつもちりばめられている。退屈なものがあって、とても刺激的なものがある。

 惑い立ち止まり、入れ替わり立ち代り、出演者達はスクリーンの横に消えていく。

 巻き戻すことは出来なくて、一時停止をすることも出来ないけれど、ただ確実に、その瞬間には誰かが銀幕の中で輝いている。

 いくつかの映画が重なって、また離れていく。

 俺の映画には何人の人が出たんだろう。どれだけの人が出番を待っているんだろう。

 俺は何人の映画に出たんだろう。あとどれだけの映画に出ることが出来るんだろう。

 またひとつ、音のない声が消える。
[PR]
by tkt33 | 2005-07-05 10:46 | 音のない声
環境
 中学の時からの友人と飯を食った。誰が今どこで何をしてる、なんて話をしてると盛り上がる。いつのまにかみんな大人になった。いつかそうなるんだろうとは思っていたけど、昔は想像もしなかった世界に、自分が、周りの皆がいる。年をとるって不思議だ。

 仕事の話になった時に相手の顔が曇った。福祉の仕事をしてるらしいんだけど、どうやら環境が最悪らしい。施設への入所希望者は増える一方で、満足に採算がとれずに人手は足りず、従業員も大変な思いをしているらしい。

 「なにかしてあげたいことがあっても、忙しすぎてそんな暇が無い。だから自分が休みの日に、ボランティアで職場に行くの。」

 世の中は不平等で、俺なんてあいつのしていることに比べたらなんの役にも立っちゃいないのに、こんなに楽に暮らしてる。規則がどうだとか、利益がどうだとか。そんなくだらない物に縛られるのはサラリーマンだけで十分なはずなのに。
[PR]
by tkt33 | 2005-06-28 18:22 | 音のない声
1年
b0009514_0171362.jpg

 音のない声は聞こえない。苦しみも孤独も助けを呼ぶ叫びも。心は人知れず崩れていく。音もなく。

 長い学生生活を一緒に過ごした仲間達が、それぞれの道を歩き始めてから丁度1年が経った。仲の良い2-3人の近況をたまには聞いて、過去を懐かしんで未来を語って。進学、就職、方向転換。新しい環境に戸惑いはすれど、選んだ道で皆それなりにやってるもんだと思ってた。

 ただどうやら、現実はそんなに甘くはないらしい。あいつならやっていける、あいつは大丈夫だ、ここは、そんなのが通用する世界じゃなかったみたいだ。

 一昨日の昼、友人の変調を告げる電話があった。「ストレスのせいかもしれない。病院に行ったみたいだけど、大変らしい。」耳を疑った。

 誰かが言ってた。『孤独は山になく、街にある。一人の人間になく、大勢の人間の"間"にある。』人は一人では生きていけない。共に泣いて、笑って、支え合って、助け合って、時に競って。そうやって、人は生きていくんだ。

 不思議な時代だ。技術はどんどん進歩して、生活はなにもかも便利になっていく。ただ、人と人はどうだ?無機質な画面の向こう?無機質なスピーカーの向こう?いくら便利になったって、誰も救われないんじゃそんなもん意味がねえんだ。

 電話の声が震えてた。そりゃそうだ。たった1年。たった1年だ!

 誰が壊したんだ。

 何が崩したんだ。
[PR]
by tkt33 | 2005-04-04 11:31 | 音のない声
忍者ツールズ RSS feed meter for http://takat.exblog.jp